末梢神経・筋研究班
学内各科や関連病院との
連携で多彩な症例を診る
堀場(竹内)恵
メンバー
堀場(竹内)恵、鈴木美紀、小林正樹
末梢神経や筋の病気は、他の神経疾患と同様に、最近新たな診断技術、疾患概念や治療法が明らかとなり、治療の選択肢や効果、予後が期待できるようになってきました。困っている患者さんを診察、診断して、その結果を患者さんにフィードバックして治療に結び付けるができるので、とてもやりがいを感じることが多いです。
臨床面
末梢神経疾患はまだまだ分からないことの多い神経疾患領域です。主な疾患として、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)をはじめとする免疫性ニューロパチーや全身性疾患に伴う末梢神経障害、遺伝性ニューロパチーなどを経験します。
末梢神経疾患の診断のためのアプローチは神経診察による症状の広がりを見ることから始まり、神経生理学的検査や画像検査などを組み合わせて鑑別診断を進めていきます。発症からの時間的な経過も大変重要な要素となります。そして、診察や他の検査に加えて神経生検による組織学的な検索を行い、病状の把握や病態の解明に努め、より良い治療を検討します。
筋疾患では、筋炎やミオパチーなどの症例をおもに経験します。筋炎の中には,皮膚症状を伴うものや他の臓器症状を伴うものがあり、各科との連携が欠かせません。各科に専門家が在籍する大学病院で特に病理診断を行っているからこそ経験できる症例も稀ではありません。 当グループの重要な役割のひとつである神経・筋生検は当科の入院症例以外にも、学内各科や関連病院とも連携し、神経・筋生検に出向することもありますし、他施設で採取された検体を当科で処理、病理診断をして臨床診断にも貢献しています。女子医大は各科との連携が非常にスムーズにとれていますので、例えば腎臓移植の後に神経障害が出たケースや、心臓疾患の患者さんの骨格筋の障害、膠原病関連の末梢神経筋疾患、透析患者さんや糖尿病患者さんのニューロパチーなど全身の病気と関連した多彩な症例が診られます。特に、膠原病リウマチ・痛風センターから膠原病に関連したニューロパチー・ミオパチーの症例の紹介や糖尿病センターからのミトコンドリア異常症・ミオパチーなどの症例も多く経験することとなります。
研究面
多彩な症例を経験できるメリットを生かして、臨床研究を行っています。症例発表やケースシリーズなどを通して、疾患の本質に迫り、治療方針や予後の予測などに有用な知見を得るべく探求を行っております。脱髄性ニューロパチーの治療経験などを積極的に発信しています。
もう一つは生検の組織標本を利用した形態学的なアプローチからの研究を行っています。過去の豊富な生検の組織標本を生かして、末梢神経・筋生検検体の光学顕微鏡・電子顕微鏡、免疫組織化学を用いた検討を行っています。神経生理部門も充実していますので、脱髄性ニューロパチーの神経生理検査と病理学的特徴の対比や、血管炎性ニューロパチー、M蛋白血症性ニューロパチーの免疫組織学的検討などを行い、国内および海外の学会で積極的に発表しています。
日ごろの研究は地道です。患者さんを診察する時も、一人ひとり丁寧に、頭の先から足の先まで注意深く診察する日々の積み重ねの中から、気になることを突き詰めていくことで成果につながるのが末梢神経・筋疾患の研究なのです。