脳梗塞の再発を予防するために
監修 東京女子医科大学 脳神経内科学
教授・講座主任 北川 一夫
脳梗塞は再発しやすい病気です。以前のデータでは脳梗塞は10年間で半数近くの方が再発して、生命をなくしたり寝たきりになったりしています。最善の内科治療を継続していただきますと1年間の再発率は3-5%に低下できます。ぜひお薬を飲み続け、生活スタイルをよくしましょう。
-
脳梗塞
-
脳出血
-
くも膜下出血
脳梗塞にも大きく3つのタイプがあり、心臓の不整脈の一つの心房細動(しんぼうさいどう)が原因で心臓の中に血栓ができ、それが剥がれて動脈の血流に乗って脳の動脈へ飛来、栓塞して脳梗塞を作る心原性脳塞栓症、脳を栄養する太い動脈(頸の血管など)の動脈硬化(アテローマ)が原因のアテローム血栓性脳梗塞、脳内の細い血管の動脈硬化が原因のラクナ梗塞、に分類されます。
-
心電図:心房細動(上段)
と正常洞調律(下段) -
頸動脈(頸の血管)
の高度狭窄
脳梗塞とは
脳卒中には、血管が詰まって血流がなくなり脳組織が死んでしまう脳梗塞、脳の中で血管が破れて血液の塊ができる脳出血(のうしゅっけつ)、脳動脈瘤が破たんして脳表面を血液が覆うくも膜下出血の3つのタイプがあります。現在我が国の脳卒中の約70%は脳梗塞です
脳梗塞再発予防の三つの柱
脳梗塞の再発予防は 脳梗塞の原因となった脳血管の動脈硬化の進展を防ぐため動脈硬化危険因子の管理、生活スタイルの改善、血のかたまりができにくくするための薬物治療(抗血栓療法 こうけっせんりょうほう)の3つが大きな柱です。
動脈硬化危険因子の管理(薬物療法を含む)
- 高血圧(診察時の血圧は140/90mmHg未満が目安)
- 糖尿病(HbA1c7.0%未満が目標)
- 脂質異常症(LDLコレステロール120mg/dl未満が目安)
生活スタイルの改善
- 禁煙する
- お酒を控える(日本酒1合、ビール中びん1本まで)
- 食べ過ぎに注意し、適正な体重
- 運動を心がける(1日30分以上早足であるく)
抗血栓療法
- 抗凝固薬(心原性脳塞栓症)
- 抗血小板薬(アテローム血栓性脳梗塞 ラクナ梗塞など)
抗血栓療法
脳梗塞の再発予防には 血がかたまりにくくする薬が必要です。この薬には大きく抗凝固薬(こうぎょうこやく)と抗血小板薬(こうけっしょうばんやく)の2種類あり 脳梗塞の病型により適切に選ぶ必要があります。くすりにより再発を予防するには くすりを継続して服用することが大事です。歯を抜くときにも歯医者さんに相談して薬を服用したまま歯を抜いてもらうようにしましょう。もし薬を止める必要があるときはかならず主治医の先生に相談しましょう。自分の判断で薬をやめることのないようにしましょう
抗凝固薬
心原性脳塞栓症の再発予防に使います
薬のなまえ;ワーファリン プラザキサ イグザレルト エリキュース リクシアナ
従来からワルファリンというくすりが使われています。ワルファリンは非常によく効く薬ですが、そのためには月に1回血液検査を行って、プロトロンビン時間国際標準比を適切なレベルに保つため使う薬の量を調整する必要があります。また薬の効きを悪くする納豆、クロレラ、青汁などを食べたり飲んだりできません。
最近 同じ効果を有するあたらしい薬が4つ登場しました。プラザキサ イグザレルト エリキュース リクシアナです。これらの薬はワルファリンと同じ程度きき、ワルファリンより出血合併症がすくなく、定期的な採血はいりません。ただし腎臓がある程度以上悪いと使えません。
抗血小板薬
心原性脳塞栓症以外のアテローム血栓性脳梗
薬のなまえ;プラビックス プレタール バイアスピリン
従来からアスピリンというくすりが使われてきましたが、日本人の脳梗塞の患者さんではアスピリンを1年以上内服すると脳出血が年間1.0%近く起こることが明らかになりました。そのため同じ効果を有し 出血の少ないプラビックスやプレタールがいまはよく使われています。
脳梗塞再発予防のための新しい薬の開発
当大学病院には脳卒中診療の専門家が揃っており、そのため国内、海外とのあたらしいより有効な薬の臨床開発(臨床治験)を行っています。現在実施中のものは下記の3つです。該当する患者さんには主治医から説明しますので 御同意いただけましたら 臨床試験に参加して明日の脳梗塞診療の発展のお手伝いをお願いします
- 原因不明の脳梗塞に対するアスピリンとダビガトランの有効性、安全性の比較試験(RESPECTーESUS研究)
- 原因不明の脳梗塞に対するアスピリンとリバーロキサバンの有効性、安全性の比較試験(NAVIGATE-ESUS試験)